ウィリアム・フォークナーは生涯の大半を故郷ミシシッピー州で「農夫」として過ごしたが、深南部の土地に根付き、まさに土霊を帯びた語り部のように意味深い諸作品を産みだしていった。日本では例えばヘミングウェイに比しても地味に映りがちだが、その文学の壮大さや深遠さ、魂を揺さぶるような情熱の激しさ、厳しさにおいては優れども決して劣るものではない。連作小説を旨とする彼の文学世界において短編は非常に重要な位置を占める。フォークナーの作品世界の全体像の把握・理解のために扱う時代を順に追いつつ南北戦争から第二次世界大戦に至る時間の流れに沿って並べた、密度の高い訳語による新訳作品集。
紅い葉
ウォッシュ
待ち伏せ
納屋が燃える
ビジョザクラのかおり
あの夕日
裂け目
エミリーのバラ
乾燥した九月
猟犬
デルタの秋
滅せず
訳者解説