研究書 monograph

イギリス湖水地方におけるアーツ・アンド・クラフツ運動

著者
臼井 雅美 著
イギリス湖水地方におけるアーツ・アンド・クラフツ運動
規格
46判/232頁/定価3,080円(本体2,800円+税)
ISBN
978-4-269-72161-6
ジャンル
レベル
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イギリス湖水地方は世界遺産にも登録されている風光明媚な観光地であるが、19世紀の工芸美術運動であるアーツ・アンド・クラフツ運動の宝庫でもあり、ブラントウッドとブラックウェルの二軒の屋敷をはじめ、多様なレベルの文化遺産が存在していた。20世紀になると湖水地方のアーツ・アンド・クラフツ運動の軌跡を保護する動きが興り、20世紀後半にはレイクランド・アーツが創設され博物館の充実、ブラックウェルの運営などを行っている。本書では、湖水地方に点在する様々なアーツ・アンド・クラフツの展開をたどりつつ、その意義を解説している。

書籍内容 Contents

プロローグ

第一章 アーツ・アンド・クラフツ運動の要―イギリス湖水地方における自然資源の歴史 

 一 自然資源の宝庫としてのイギリス湖水地方―

    スレート、石灰岩、花崗岩、黒鉛、銅、そして鉄鉱石 

 二 地質学発祥の地としてのイギリス湖水地方―

    ジョナサン・オトレイ、アダム・セジウィック、クレア・フェルを中心に 

 三 新石器時代の採石跡―イギリス湖水地方の文化遺産のルーツ 

 四 中世における採石跡―ローマ城壁、要塞、修道院―

    ヘイドリアンズ・ウォール、ハードノット・ローマン・フォート、

    ファーネス・アビーを中心に 

 五 自然資源の恩恵を被った地場産業―

    羊毛業、鉛筆製造、靴製造、ボビン製造を中心に 

 六 産業革命で復活した鉱物の大規模採掘 

 七 二十世紀以降の鉱物発掘事業の行方 

第二章 イギリス湖水地方におけるアーツ・アンド・クラフツの屋敷

 一 アーツ・アンド・クラフツの屋敷の誕生秘話―

    ウィリアム・モリスとフィリップ・ウェッブ

 二 湖水地方のピクチャレスク賛美の時代―

    ウィリアム・ギルピンからウィリアム・ターナーへ

 三 湖水地方への移住者たちが建てた屋敷―

    ウィリアム・ワーズワースたち湖水詩人からトマス・アーノルド、

    ハリエット・マーティノー、ジョン・ラスキンへ

 四 湖水地方に台頭してきた建築家、造園家、景観設計家たち―

    ジョン・カーとジョージ・ウェブスターを中心に

 五 湖水地方に到来したアーツ・アンド・クラフツの建築ラッシュ―

    ジョセフ・パティンソン、ダン・ギブソン、J.S.クロウザー、

    G.F.アーミテージを中心に 

第三章 アーツ・アンド・クラフツの庭園学 

 一 アーツ・アンド・クラフツのデザイナーとしての造園家たちー

    ガートルード・ジーギルとトマス・モーソンの出現

 二 アーツ・アンド・クラフツの庭の特徴

 三 湖水地方におけるアーツ・アンド・クラフツの庭園の誕生

 四 湖水地方におけるアーツ・アンド・クラフツの庭園学の確立

 五 湖水地方から発信されたアーツ・アンド・クラフツの景観設計から都市計画への発展―

    トマス・モーソンを中心に

第四章 アーツ・アンド・クラフツのギルド運動と起業家誕生

 一 美術教育とギルド運動―インダストリアル・アーツへの道

 二 ジョン・ラスキンの北西イングランドにおける

    ザ・ギルド・オブ・セント・ジョージ

 三 ラングデールの軌跡―スザンナ・ビーヴァーの指導によるレース工房セント・

    マーティンズ・コテージからレース作家エリザベス・プリケット誕生へ

 四 ラングデール・リネン・インダストリーの起業と女性指導者・経営者の誕生―

    マリオン・トウェルヴスとエリザベス・ペッパー

 五 ボウネス= オン=ウィンダミアに誕生したデザイナー、指導者、

    起業家アニー・ガーネットの工房ザ・スピナリー

 六 ケンダルに生まれた家具工房―アーサー・シンプソンのデザインと起業

第五章 イギリス湖水地方のアーツ・アンド・クラフツ運動の学び舎

 一 十九世紀における教育改革運動の軌跡

 二 イギリスにおけるメカニックス・インスティテュート運動

 三 湖水地方とその周辺に創設されたメカニックス・インスティテュートの創設と発展

 四 コニストン・メカニックス・インスティテュートの意義

 五 スクール・オブ・アートの誕生と発展

 六 イーディス・ローンズリーによるレイ城の個人塾から

    ケズィック・スクール・オブ・インダストリアル・アーツ創設へ

第六章 現代のイギリス湖水地方に残るアーツ・アンド・クラフツ運動の足跡

 一 ナショナル・トラストによる湖水地方の自然と生活保護活動

 二 レイクランド・アーツの創設と意義―

    アボット・ホール・アート・ギャラリーを中心に

 三 湖水地方に点在する小さな私設博物館の創設と軌跡―

    アーミット姉妹たちの葛藤を中心に

エピローグ 

参考文献