研究書 monograph

ヴィクトリア朝時代の文学 ―社会・アイデンティティ・ジェンダー―

著者
著者 吉田 一穂
ヴィクトリア朝時代の文学 ―社会・アイデンティティ・ジェンダー―
規格
A5判/368頁/定価4,180円(本体3,800円+税)
ISBN
978-4-269-72158-6
ジャンル
レベル
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19世紀初頭の徹底した唯物主義は、人間を単に道具とみなす傾向を生み、産業経済の中でまるで当然のように擦り切れていかざるを得ない一部分となってしまった人間の苦しみが顕在化したが、ディケンズのような人間にとっては、これはあまりにも非情なことであった。それは個々の人間の尊厳を否定することであると同時に、人間性を傷つけて、計算された客観性のみを強調するものであった。勇敢にもディケンズは搾取者たちを容認せず、彼は庇護なき労働者や寄る辺なき子供たちの味方であろうとした。 ディケンズのほか本書で取り上げる作家たちの中には、ハーディーのように、アイデンティティを認識し絶望する登場人物を描き出す場合もあるが、ギャスケルやエリオットのように人間相互の愛情で階級間の壁を乗り越える様を描き出す場合もある。 本書では、ヴィクトリア朝時代の社会的背景を考察するだけでなく、社会の中におけるアイデンティティやジェンダーについても考えていく。

書籍内容 Contents

第一部 男性作家による作品

 第一章 Vanity Fair ―ベッキー・シャープの人物描写と時代の肖像としての作品の性格―

 第二章 ディケンズとジェンダー ―家父長制神話の崩壊とディケンズの限定的理解―

 第三章 Little Dorrit ―エイミー・ドリットとグランド・ツアー―

 第四章 Alice's Adventures in Wonderlandにおけるアイデンティティの問題

 第五章 Tess of the d'Urbervilles ―エンジェル・クレアとテスの過去―

 第六章 Jude the Obscure ―新しい女と翻弄される男―

 第七章 Draculaの中の超越的存在 ―ヴァン・ヘルシング教授による魂の救済―


第二部 女性作家による作品

 第一章 Wuthering Heights ―復讐心と孤児の運命―

 第二章 Jane Eyreにおけるヒロインの願望と選択

 第三章 Villette ―〈女性が一人で生きていくこと〉に対するイギリス人女性ルーシーの意識とムッシュ・ポール・エマニュエルの許容性―

 第四章 Mary Bartonにおける父親と娘の階級意識

 第五章 Silas Marnerにおける自己と他者

 第六章 Middlemarch ―〈妻として夫を援助すること〉とドロシアの二回の結婚―

 第七章 Daniel Deronda ―デロンダによるグエンドレンへの精神的感化とユダヤ教への理解―


第三部 旅行記

 第一章 Pictures from Italy -美と宗教に関するディケンズの思想―

 第二章 Unbeaten Tracks in Japan ―イザベラ・バードの見た宗教の混在と近代日本の礎を築いた明治時代の宣教―

終章

補遺 Robinson Crusoe ―ヒーローと神の恩寵―

初出の文献一覧

主要参考文献一覧

索引